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周術期に発症するPAC・PVC その3 [PAC・PVC]

2) 周術期心房細動の予防
 従来,周術期心房細動に対しては非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬,ジギタリスが使用されてきた.非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬は上室性頻脈に対して有効であるとされる一方で,房室ブロック,心不全などの副作用が多いことが問題となっている.このため,Ca拮抗薬の予防的投与は慎重に行わなければならない.ジギタリスも周術期心房細動予防のメタ解析において有効性を示すことができなかった.周術期心房細動は交感神経系の緊張が一因であるために副交感神経に作用するジギタリスでは予防効果は得られにくいことが理由として挙げられる.
 表1に示す方法が有効な周術期心房細動の予防法として報告されている.周術期心房細動を発症した症例は洞調律維持症例と比較してCRP,白血球数,炎症性サイトカインの値が有意に高いため,炎症性の反応が周術期心房細動の一因であると考えられている1).これを受けて抗炎症薬である副腎皮質ホルモン2),非ステロイド性消炎鎮痛薬3)の予防的投与の有効性が報告されている. スタチンは血管内皮細胞の機能を改善し,炎症を抑える.その結果,周術期心房細動だけでなく周術期心血管系イベントを減少させると報告されている4).電解質では周術期心房細動発症症例において血清マグネシウム値が低いこと,頻脈性不整脈とマグネシウムには深い関わりがあることから周術期マグネシウム投与の有効性も報告されている12).以前より心房性期外収縮が周術期心房細動の一因であるとされ,期外収縮より早い心拍でペーシングすることによって周術期心房細動を予防できるとされてきた.メタ解析においても単心房ペーシング,両心房ペーシングいずれも有意に周術期心房細動を減らすことが示されている5-7)
アミオダロンはα遮断,β遮断,Kチャネル遮断,Na,Ca遮断作用を持ったいわゆるマルチチャネルブロッカーであり,Vaughan Williams分類Ⅲ群の抗不整脈に分類される薬剤である. ACC/AHA/ESC心房細動治療ガイドラインにおいてもアミオダロン投与は心房細動の高リスク症例への予防法として適切であると推奨されている8).その一方で,アミオダロンを周術期投与したプラセボ対照RCTのメタ解析では,アミオダロン投与によって副作用特に徐脈が1.7倍,低血圧が1.6倍に増加したことが示された9).よってアミオダロンの予防的投与は周術期心房細動を発症するリスクの少ない症例に対する投与は避け,投与の際にも徐脈,低血圧などの副作用への注意が必要である.
β遮断薬は刺激伝導系細胞や心筋細胞への直接的な抗不整脈作用を有しており,Vaughan Williams分類Ⅱ群の抗不整脈に分類される薬剤である.周術期心房細動に対してもβ遮断薬の周術期予防的投与が試みられている.その結果,β遮断薬による周術期心房細動の抑制が多くの試験から報告され10),アミオダロンとともに周術期心房細動を予防する薬剤としての地位を確立している.一方,POISE trialにおいて周術期β遮断薬投与によって心血管イベントは減少するものの全死亡率,脳卒中発症率は有意に増加すると報告された11).このためβ遮断薬投与の際には副作用,特に徐脈,低血圧に対する注意が必要である.

表1.jpg

【参考文献】
1) Abdelhadi RH et al.: Relation of an exaggerated rise in white blood cells after coronary bypass or cardiac valve surgery to development of atrial fibrillation post-operatively. Am J Cardiol 93 :1176-8,2004
2) Halonen J et al. :Corticosteroids for the prevention of atrial fibrillation after cardiac surgery: a randomized controlled trial. JAMA 297:1562-7,2007
3) Cheruku KK et al. :Efficacy of nonsteroidal anti-inflammatory medications for prevention of atrial fibrillation following coronary artery bypass graft surgery. Prev Cardiol 7 :13-8, 2004
4) Marin F et al.: Statins and post-operative risk of atrial fibrillation following coronary artery bypass grafting. Am J Cardiol 97:55-60,2006
5) Miller S et al.: Effects of magnesium on atrial fibrillation after cardiac surgery: a meta-analysis Heart 91:618-23,2005
6) Burgess DC et al: Interventions for prevention of post-operative atrial fibrillation and its complications after cardiac surgery: a meta-analysis Eur Heart 27:2846-57,2006
7) Crystal E et al: Interventions on prevention of post-operative atrial fibrillation in patients undergoing heart surgery: a meta-analysis Circulation 106:75-80,2002
8) Daoud EG et al: Temporary atrial epicardial pacing as prophylaxis against atrial fibrillation after heart surgery: a meta-analysis J Cardiovasc Electrophysiol 14:127-32,2003
9) Fuster V et al : American College of Cardiology Foundation/American Heart Association Task Force. 2011 ACCF/AHA/HRS focused updates incorporated into the ACC/AHA/ESC 2006 guidelines for the management of patients with atrial fibrillation: a report of the American College of Cardiology Foundation/American Heart Association Task Force on practice guidelines. Circulation.123:e269-367,2011
10) Patel AA et al. Safety of amiodarone in the prevention of post-operative atrial fibrillation: a meta-analysis Am J Health Syst Pharm 63:829-37,2006
11) Coleman CI et al.: Impact of prophylactic postoperative beta-blockade on post-cardiothoracic surgery length of stay and atrial fibrillation. Ann Pharmacother. 38:2012-6,2004

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