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術前使用薬 その2 [術前使用薬]

5.抗狭心症薬
a.亜硝酸薬
 ニトログリセリンと硝酸イソソルビドは術前まで継続する.心筋虚血と心臓死を予防するためのニトログリセリンの有用性は不明である.使用の際には,麻酔計画と患者の血行動態を考慮し,周術期に血管拡張による血管内容量不足に注意する.

b.K チャネル開口薬
 ニコランジルは,ATP感受性Kチャネルを開口させ,同時にNOを遊離することにより血管を拡張させる.臨床使用濃度で,ニトログリセリンと同等の冠血管拡張作用,ジルチアゼムのような冠攣縮緩解作用,さらに心保護作用をもつ.また,血行動態への影響も少なく,周術期投与は心筋虚血を減少させると報告されている.

6.抗血栓薬
a.抗凝固薬
 ワルファリンは肝でのビタミンK利用を妨げ,凝固因子(Ⅱ,Ⅶ,Ⅸ,Ⅹ)の合成を阻害することにより,抗凝固作用を発揮する.周術期には半減期の短い薬剤への代替療法が必要となる.待機手術では手術4日前までに中止する. INRが治療範囲内よりも低くなったとき,ヘパリンもしくは低分子ヘパリン投与を開始する(通常は手術の2日前).手術5時間前にヘパリン投与を停止し,aPTTが正常値範囲内であることを確認する。低分子ヘパリンは12-24時間前に投与を中止する.

b.抗血小板薬
 アスピリンはシクロオキシゲナーゼの阻害により強い血小板凝集活性をもつトロンボキサンA2の合成を阻害することで血小板の凝集を抑制する.チクロピジン,クロピドグレルは血小板の凝集塊を形成するのに必要なグリコプロテインⅡb/Ⅲaを阻止することで作用を発揮する.クロピドグレルはチクロピジンと比較し,肝障害、好中球減少などの副作用の頻度も低い.アスピリンやチクロピジンによる血小板凝集抑制効果は不可逆的であるため予定手術の少なくとも7日前には中止することが望ましい.ジピリタモール,シロスタゾールは血小板機能を可逆的に抑制するため,2日前に休薬を行う(表1).
これらの抗血栓療法を受けている患者での脊髄くも膜下麻酔,硬膜外麻酔については以前より様々な議論がなされてきた.アメリカ局所麻酔学会は脊髄くも膜下麻酔や硬膜外麻酔と抗凝固療法に関する勧告の中でワルファリン投与患者に対する硬膜外カテーテル挿入,抜去時のPT測定,神経学的検査の施行を推奨している.チクロピジンは血腫形成の危険性が十分に検討されていないため注意が必要であるが,他の抗血小板薬に関しては,硬膜外麻酔を中止するほどの血腫形成の危険性は少ないとしている.しかし,心臓血管外科手術での使用に関しては術中にヘパリンのフルドースを全身投与するため,これらの勧告をそのまま適応できるか不明である.

7.スタチン
 スタチン療法は血管内皮細胞の機能を改善させ周術期心血管イベントを減少させ,メタ解析で術前スタチン療法の周術期の有用性が報告されている.またACC/AHAガイドラインにおいてもスタチンは新規に追加されている.スタチンは術当日まで服用とし,術後早期に再開とする.

8.経口糖尿病治療薬,インスリン
 心臓血管手術を受ける患者,とくに冠動脈疾患を持つ患者では糖尿病の合併が多く,術前より薬剤による血糖コントロールを受けていることが多い.経口糖尿病治療薬,インスリンは低血糖予防のため,手術当日の投与は控える.

9.ステロイド 
 ステロイドは当日朝まで服用する.安静時コルチゾル分泌量は20mg/日であるが,周術期には120-180mg/日まで増加し24-72時間後に元に戻る.手術時点で1週間以上ステロイド治療を行っている場合,または過去1年以内に1週間以上ステロイド治療を受けている場合には副腎皮質抑制が起こり周術期に充分なコルチゾル分泌が起こらない場合がある.そのため侵襲の強い手術ではヒドロコルチゾン100-150mgを2-3日投与する.

10.抗精神病薬
 原則的に抗うつ薬,抗不安薬,抗精神病薬は術当日まで服用する.しかし,抗精神病薬の一部には麻酔薬の作用に影響を与える薬剤,循環器系に影響を与える薬剤が存在するため,該当薬剤が使用されている場合には使用薬の中断,変更が推奨される(表2).その一方,モノアミンオキシダーゼ阻害薬の中断により自殺傾向に陥る可能性があること,抗うつ薬を変更すると高体温,昏睡を起こすことなどが報告されているため,重症例では薬剤の中断,変更に際して十分に検討する.

【参考文献】
1) Fleisher LA, et al.:Circulation 2007;116:e418-499
2) Fuster V, et al.:Circulation 2006;114:e257-354
3) Poldermans D, et al.:N Engl J Med.1999;341:1789-1794
4) POISE Study Group.:Lancet 2008;371:1839-1847

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術前使用薬 その1 [術前使用薬]

1.基本的な考え方
 周術期管理の進歩に伴い,合併症をもつ症例に対しても安全に手術が行われている.合併症に対しては投薬を受けている場合が多いが,術前用いられていた薬剤は原則的に術当日まで投与する.しかし,周術期管理に支障を来す可能性があり投与による不利益が利益を上回る場合には手術前に休薬または薬剤の変更を行う.

2.ジギタリス製剤
 ジギタリス製剤は,うっ血性心不全や上室性頻脈性不整脈の治療に用いられる.ジギタリス製剤は,安全域が狭く,中毒域に達するとさまざまな不整脈が出現する危険性がある.周術期の低カリウム血症(利尿薬使用や過換気による)で不整脈の発現頻度は増加する可能性がある.心不全に対して使用している場合には術前24時間前に中止し,上室性不整脈に対して使用している場合では,術当日まで投与する.
しかし心臓手術の場合,体外循環に伴う血液希釈,急激な電解質変化などにより,ジギタリス中毒が発生しやすい.術前長期にわたってジギタリスを投与されている患者では,人工心肺後にジギタリス血漿濃度の上昇が認められ,ジギタリスによる不整脈の感受性が上昇しているとの報告もある.そのため人工心肺を用いる症例では,原則として手術2日前にジギタリスを中止する.

3.降圧薬
 降圧薬として,カルシウム拮抗薬を中心にアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬,アンギオテンシンⅡ阻害薬(ARB),beta遮断薬が投与されている.ACE阻害薬とARBを除き,降圧薬は原則として術当日朝まで服用させる.

a.β遮断薬
 β遮断薬は単に降圧薬としてだけでなく,心拍数を減らし,心筋酸素消費量を減少させる.心筋梗塞後の患者の予後改善効果や,心血管疾患に対する予防効果も認められる.周術期におけるβ遮断薬の新たな積極的投与により,死亡率,周術期心筋・虚血梗塞の発生を減少させるという報告が多いが,近年の大規模プラセボ対照無作為試験において周術期のβ遮断薬投与は生命予後を悪化させる可能性が示唆されている.高リスク症例ではbeta遮断薬は術前投与するのが望ましいが,投与に関しては副作用,特に徐脈,低血圧への注意が必要である.また,周術期のβ遮断薬の中止で血圧上昇や心筋虚血発症率上昇(反跳減少)や,1年死亡率が増加したとの報告がある.術前使用症例では当日まで継続すべきである.

b.カルシウム拮抗薬
 カルシウム拮抗薬は,その構造式からジヒドロピリジン系,ベンゾジアゼピン系,フェニルアルキルアミン系,ジフェニルアルキルアミン系に分けられる.ジヒドロピリジン系は他に比べ血管拡張作用が強い.アムロジピンは心抑制が少なく,作用時間も長い.フェニルアルキルアミン系は刺激伝導抑制作用が強く,ベンゾジアゼピン系はその中間的な性質を持っている.術前に投与されているカルシウム拮抗薬は術当日朝まで服用させる.吸入麻酔薬との相互作用による循環抑制,筋弛緩薬との併用による作用延長が報告されているが,臨床上問題になることは少ない.

c.ACE阻害薬, ARB
 ACE阻害薬,ARBは降圧薬としてだけでなく,心不全治療の第一選択薬として広く用いられている.ACE阻害薬,ARBは臓器保護作用を持つ代表的な降圧薬であり,心筋虚血の改善,リモデリングの抑制,生命予後の改善をもたらす.しかし,長期ACE阻害薬服用患者では,麻酔導入時に低血圧が起こりやすいこと,人工心肺離脱時の血管収縮薬の反応性が鈍ること,ARB服用患者では導入後に治療不応性の低血圧が起こりやすいことが報告されている.麻酔薬によって交感神経系が抑制されると、レニン-アンジオテンシン系の関与が大きくなることが予測される.しかしACE阻害薬,ARBを投与すると交感神経系だけでなくレニン-アンジオテンシン系も抑制され過剰な血圧低下が生じる危険性が高まる.そのため, ACE阻害薬,ARBの手術当日の投与は控えた方がよい.

d.利尿薬
 フロセミドに代表されるループ利尿薬は,副作用は少ないが,利尿に伴い代謝性アルカローシス,低カリウム血症を起こすことがある.ジギタリス使用時は血清カリウム値の確認は重要である.利尿薬は術当日まで服用を続けてもよいが,循環血液量にかかわらず尿量が保たれるので,術中の尿量の評価は慎重に行う.カリウム保持性利尿薬は人工心肺,心停止液を用いる手術では手術当日は中止する.

4.抗不整脈薬
 カルシウム拮抗薬,β遮断薬,またVaughan Williams分類のⅠ群の薬剤が用いられている.抗不整脈薬は程度に差はあるものの心抑制作用をもつが,不整脈のコントロールをより重視するため,手術当日朝まで服用させる.術中も不整脈のコントロールが十分でなければ抗不整脈薬の静脈内投与を行うが,β遮断薬とベラパミル,ジルチアゼムの併用は高度の徐脈,循環虚脱を起こす可能性があるので注意する.
Vaughan Williams分類のⅢ群に属するアミオダロンは,難治性不整脈に対して頻用されている.作用時間が長く,かつ心抑制も強く麻酔薬との相互作用で昇圧薬抵抗性の低血圧を招く可能性が高い.

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