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心房細動の周術期管理 [心房細動]

1.基本的な考え方
 心房細動は最も多い不整脈の一つであり,加齢に伴いその頻度が増していく.従来は基礎疾患としてリウマチ性心疾患が多かったが,現在では明らかな基礎疾患のない非弁膜性心房細動(nonvalvular atrial fibrillation ;NVAF)の割合が増加している.治療法として,抗血栓療法を回避できる洞調律維持療法(rhythm control),心機能を維持することに焦点を絞った心拍数管理療法(rate control)があるが,この2つの管理法を比較した研究で生命予後に有意差を認めないことが示唆され,現在では心拍数管理と塞栓症予防が心房細動の管理の中心となっている.

2.抗血栓療法の重要性
 心房細動における症候性脳梗塞の年間発症はおよそ年5%前後であり,脳血栓塞栓症の予防は重要な問題である.心房細動では血栓塞栓症リスクが集積すると脳梗塞発症率が増加することが注目されており,リスクを層別化する際にはCHADS2スコアが広く用いられている.スコア合計が高いほど脳梗塞発症率は高くなるため,血栓塞栓予測に広く用いられている.リスクの高い症例に対し抗血栓療法が必要であるが,心房細動治療ガイドライン(2008年改訂版)では脳塞栓症予防を目的としたアスピリン投与の有効性は限定的であるとし,抗凝固療法を中心とした血栓塞栓症管理を推奨している.

3.周術期の抗血栓療法
 心房細動を合併した症例では抗凝固療法としてワルファリンを使用している場合が多いため,周術期にはより半減期の短い薬剤を使用した代替療法が必要となる.
待機手術の際には,手術4日前にワルファリン投与を中止する.PT-INRが治療範囲内よりも低くなったとき,ヘパリンもしくは低分子ヘパリン投与を開始する(通常は手術の2日前).手術5時間前にヘパリン投与を停止し,aPTTが正常値範囲内であることを確認する.低分子ヘパリンを使用した際には12-24時間前に投与を停止する.術後は止血のコントロールがつき次第,ヘパリンもしくは低分子ヘパリンを再開する.
緊急手術の場合,新鮮凍結血漿10-15mL/kgの投与を行う.第Ⅶ因子は特に半減期が短い(2時間)ため,新鮮凍結血漿を投与する際にはビタミンK(10-15mg)を同時に投与する.但し,ビタミンK静注後凝固因子が生成されるまで3-6時間必要である.

4.心拍数管理の重要性
 心房細動に伴う血行動態の変化には心房収縮の消失による障害,頻脈による障害,そして心拍が不整であることによる障害の三つが関わっている.心房細動では心房収縮が消失することによって心拍出量は20-30%前後低下する.頻脈は拡張期時間の短縮をもたらすため,拡張時間への依存性の高い心臓ほど大きな影響を受ける.心房細動中に130/min以上の心拍数が持続するとうっ血性心不全を惹起する.

5.周術期の心拍数管理 (表)
 心房細動治療ガイドラインにおいて安静時の心拍数(心室)60-80/min,運動時の心拍数(心室)90-115/minでの管理を推奨している.周術期についても90-115/minでの管理が望ましい.心拍数管理にはβ遮断薬,Ca受容体遮断薬を第一選択とする.心機能低下症例では,陰性変力作用の強いβ遮断薬,Ca受容体遮断薬は使用しにくいためジゴキシンを投与する.

【参考文献】
1) Wyse DG, et al.:N Engl J Med 2002;347:1825-1833.
2) Gage BF, et al.:JAMA 2001;285:2864-2870.
3) Fuster V, et al.:Circulation 2006;114:e257-354.
4) 小川 聡 Circulation Journal 2008; 72 SupplⅣ:1581-1638.

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