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DES時代の心臓血管麻酔 その6 [Drug-Eluting Stent]

 以上,DESに関する最近の知見をまとめた.DESが本邦に導入されてわずか6年であるがその普及は爆発的であり,ステント留置の70%以上を占めるに至っている.一方,長期成績が明らかになるにつれ,いくつかの問題点が浮き彫りにされている.DESの導入によってCABGは多枝病変症例等の難易度の高い手術,または合併症を有する症例の割合が増加するものと考えられる.そのため我々麻酔科医は重症開心術症例に対する周術期管理に精通する必要がある.また,非心臓手術においても DES留置症例に対する周術期管理法の早期の確立が望まれる.
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DES時代の心臓血管麻酔 その5 [Drug-Eluting Stent]

4. DES vs CABG
 DES導入以前よりステント留置と冠動脈バイパス手術(Coronary Artery Bypass Grafting : CABG)との比較は行われ,両者は死亡率や心筋梗塞の発症において長期的に差がないものの再血行再建率がCABG施行症例で有意に低いため,多枝病変症例,糖尿病合併症例,左主幹部症例などでは,外科的治療が有効であるとされてきた.再狭窄率の低いDESの導入により,このような背景を持つ症例においてもCABGと同等の治療成績が得られることが期待されてきた. Hannanらは,DES,CABGを施行した多枝病変症例についてデータベースより抽出した17400例を対象に再血行再建率,心血管イベント,生存率について比較検討を行った.その結果, CABG 群のほうが, 18 ヵ月死亡率と,死亡または心筋梗塞の発生率が低く,CABG 群では,血行再建術の再施行率も低いと報告した1).この結果,多枝病変を有する患者において,CABG は依然としてDESによる治療よりも死亡率が低く,死亡または心筋梗塞の発生率,血行再建術の再施行率も低いことが認められた.左主幹部病変を有する症例2),糖尿病合併症例3)についても検討されているが,いずれの試験も生存率に有意差を認めないものの,冠血行再建率におけるCABGの優位性を認める結果となっている.また,左冠動脈主幹部病変を含む重症冠動脈疾患に対する無作為化試験であるSYNTAXではCABGによる治療の方が血行債権術の再施行率が低いと報告する一方,CABGとPCIで1年の死亡率,心筋梗塞発症率に差はなく,CABG施行症例では脳合併症が有意に多かったと報告している4).現在も重症冠動脈疾患に対する標準治療はCABGであるが,今後は適切なリスク分析5)によって治療選択を行う必要があると思われる.

【参考文献】
1) Hannan EL et al: N Engl J Med. 2008;358:331-41
2) Seung KB et al: N Engl J Med. 2008;358:1781-92
3) Costa MA et al: J Am Coll Cardiol 2005;45:72A
4) Serruys PW et al: N Engl J Med. 2009;360:961-72
5) Serruys PW et al: EuroIntervention. 2009;5:50-6
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DES時代の心臓血管麻酔 その4 [Drug-Eluting Stent]

3. 周術期における抗血小板療法
 DES留置後の遅発性ステント血栓症は抗血小板薬の中止が引き金となると考えられているため,特に出血を伴う外科的手術,または内視鏡的手術における抗血小板療法継続の可否が問題となる.Rabbittsらは,DES留置2年以内に非心臓手術を施行した520例を対象とし,心血管イベントとその発症時期について後ろ向きに検討を行った1).その結果,術前抗血小板薬の使用と出血には相関を認めなかったが,DES留置から手術施行までの期間が長いほどイベント発症率が少ないと報告した.また,待機手術に対するPCIに関してはACC/AHA 2007 Perioperative Guideline2)において次のように推奨している.①リスクの高い冠疾患でなければPCIを施行しないで管理を行う,②リスクの高い冠疾患でも,手術による出血のリスクの少ない症例ではPCIと抗血小板薬2剤併用療法を行う.③リスクの高い冠疾患かつ手術による出血が予想される症例では手術までの期間に応じて治療法を選択する.具体的には手術まで14-29日の場合はバルーン拡張術,手術まで30-365日の場合はBMS留置,手術まで365日以上の場合はDES留置を選択する.一方,DES留置1年未満でも,予期せず非心臓手術が必要となる場合も考えられる.このような状況に対する周術期管理としていくつかのプロトコールが提案されている(表)3).しかし,これらのプロトコールもエビデンスとして確立したものではなく,周術期におけるさらなるDES留置症例の蓄積が期待される.

表2.jpg

【参考文献】
1) Rabbitts JA et al: Anesthesiology. 2008;109:596-604
2) Fleisher LA et al: J Am Coll Cardiol. 2007;50:1707-32
3) Newsome LT et al: Anesth Analg. 2008;107:570-90
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DES時代の心臓血管麻酔 その3 [Drug-Eluting Stent]

2. ステント血栓症
 ステント血栓症は,元来DESに特有なものでなく,BMS留置時にも引き起こされる合併症であった.BMS留置後のステント血栓症の予防としては抗血小板薬であるアスピリンを基礎薬とし,急性期のへパリン持続投与,それに続くワルファリンの抗凝固療法が行われていた. BMS留置後のステント血栓症の頻度は改善せず5%を超えたままであったが,1998年のSTARS trial1)によってアスピリンとチクロピジンの併用療法が従来の抗凝固療法との併用よりもステント血栓症予防に効果的であり,その頻度を1%未満に抑制することが報告された.その後BMSにおけるステント血栓症は留置後数日以内の急性期に多く発症し,ステント表面を血管内皮が被覆する2週間を過ぎると発症頻度が少なくなることが明らかになり現在ではチクロピジンの投与期間は留置後1ヵ月間投与が標準とされている.このようにBMSの改良,抗血小板薬2剤併用療法(アスピリン,チクロピジンの併用)などにより,ステント植え込み後早期(30日以内の発症)の早期ステント血栓症のリスクが軽減できることとなった.一方, DESにおいては,使用される免疫抑制剤や抗癌剤などの薬剤の作用によって新生内膜の増殖が抑制される.新生内膜増殖の抑制はステント内再狭窄を抑制する一方でステント内の内皮の被覆が遅延することとなり,血栓症の温床となるものと考えられている.現時点ではDESにおける遅発性ステント血栓症の発症機序は明らかにはなっていないが,最近注目されているのはDES植え込み局所におけるポリマーに対する過敏性反応2)と炎症の持続および再内皮化の遅延3)である.また,何らかの理由による抗血小板薬の中止が影響を与えていると考えられるが,アスピリン抵抗性4)やチエノピリジン系薬剤に対する抵抗性5)が影響するとの報告もある.遅発性ステント血栓症のリスクとしては,抗血小板療法の中断,ステント血栓症の既往,複数のDES留置,分岐部へのDES留置,狭心症の再発,糖尿病,低心機能などが考えられている6)
 遅発性ステント血栓症を予防するために抗血小板二剤併用療法をどの程度続ける必要があるのか現在のところエビデンスはないが,現在ではクロピドグレルを可及的に1年間,アスピリンは半永久的に投与する方針が推奨されている.さらにステント血栓症の高リスク例,左主幹部病変例では半永久的に使用すべきであるとの意見もある7).遅発性ステント血栓症を回避するためには抗血小板薬をできるだけ長期にわたり使用することが有効であると考えられる.その一方で,抗血小板薬は出血性合併症発症の危険性をはらんである.CURE Trial8)では,急性冠症候群12562例を対象にアスピリンとクロピドグレルの抗血小板薬2剤併用療法を行い,出血性合併症について検討をしている.その結果,抗血小板薬投与によって輸血を必要とするような重篤な出血だけでも3%近く発症していると報告した.ステント血栓症は発症すると予後は不良で大半の症例で急性心筋梗塞となり,半数近くで致命的である.しかし,抗血小板薬の使用に関してはステント予防だけでなく出血性合併症のリスクも念頭に置くべきである.特にDES留置後の長期使用に関してはその利点欠点を評価し,用量,使用期間を判断することが望まれる.

【参考文献】
1) Leon MB et al: N Engl J Med. 1998;339:1665-71
2) Virmani R et al: Circulation. 2004;109:701-5
3) Guagliumi G et al: Circulation. 2003;107:1340-1
4) Gum PA et al: J Am Coll Cardiol. 2003;41:961-5
5) Lau WC et al: Circulation. 2004 20;109:166-71
6) Howard-Alpe GM et al: Br J Anaesth. 2007;98:560-74
7) Iakovou I et al: JAMA. 2005;293:2126-30
8) Yusuf S et al: N Engl J Med. 2001 16;345:494-502
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DES時代の心臓血管麻酔 その2 [Drug-Eluting Stent]

1. DES vs BMS
 DESは,ステントで初期の拡張を確保し,さらにPCI急性期の合併症と慢性期のリコイルを予防しつつ,かつその後の再狭窄を免疫抑制剤,抗癌剤によって抑制するとの考えによって開発された.このデバイスは,1999年から始まったFirst in Man Clinical trial on sirolimus-eluting stents (FIM)1)で初めて臨床応用されたが,使用された45例でステント内狭窄を認めなかったため一躍脚光を浴びることとなった. RAVEL2)は世界で初めてのDESに対する多施設大規模臨床試験である.この試験はヨーロッパと南米の238例を対象にDES群,BMS群の2群に分け心血管イベント,予後について比較検討を行っている.その結果,DES群の6か月成績は,再狭窄0例,再血行再建率0%,ステント内血栓0例という成績を得た.2年成績でもDES留置症例では,心臓死,血栓症がなく,再血行再建率は2.5%と有意に低かった.このことから,DES留置による新生内膜増殖抑制効果は2年以上続き,再血行再建率を減少させ,さらに心血管イベントの減少に寄与することが認められた.つづく臨床試験であるSIRIUS3)では全米56施設,1100例を対象に行われた.この大規模臨床試験では,病変長30mm,2個までのステント使用が許可され,DES群では再狭窄率8.9%(BMS群 36.3% p<0.01)の結果を残した.DES留置による再狭窄0%の神話は崩れることとなったが,その理由として,糖尿病,病変長,多枝病変などのハイリスク症例が多かったことを挙げている.詳細に検討を進めると,再狭窄発生部位はステント隣接箇所に多く実際のステント内狭窄は3.2%と低値であった.また,DES留置によって心血管イベント発症率も有意に低下したと報告している.
 順調な滑り出しを見せたDESであったが,2004年DES留置後1年以上経過したにもかかわらずステント血栓症を認めたとする4症例が報告された (表1)4).これらの症例はすべて非心臓手術などのためにアスピリン中止の数日後にステント血栓症を発症していた.この症例報告を受けてBASKET-LATE5)では,ステント留置後のステント血栓症について検討を行っている.ステント留置後6カ月間心血管イベントが無かった症例を対象として,クロピドグレルを留置後6カ月で中止した後1年間アスピリンのみを投与し,DES留置例とBMS留置例を比較検討した.発症したステント血栓症はBMS 群1.3%,DES群2.6% (P=0.23)であり,有意な差を認めなかったものの,BMS群のステント血栓症は全例クロピドグレル中止後150日以内の発症であるのに対し,DES群の5例はクロピドグレル中止後300日以降に発症していた.これらのことからDES留置症例では抗血小板薬2剤併用療法の中止がステント血栓症のリスクとなること,DES留置後1年以上を経過してもステント血栓症が発症することが再確認された.さらにDaemanらはDES留置症例8146例を対象に3年にわたって臨床所見と冠血管造影を施行し,その結果,ステント血栓症は3年にわたり年0.6%で発症していると報告した6).また,ステント留置19771症例の予後を3年間追跡調査したSCAAR7)では,心筋梗塞発症頻度にはDES留置,BMS留置症例に差を認めなかったものの,死亡・心筋梗塞発症率,死亡率が,6ヶ月以降においてDES留置症例において有意に悪化していると報告している.DESとBMSを比較したメタアナリシス8)でも,生存率,死亡・心筋梗塞発症率には差を認めないものの,DES留置症例では有意にステント血栓症が多いと報告している.これらの結果から,BMSでは再狭窄率が有意に高いもののBMS,DESの長期予後に有意な差を認めず,DES留置症例では留置1年以降もステント血栓症に注意する必要があることが明らかとなった.現在までのところ,DESは新生内膜増殖に伴う再狭窄を減少させるものの,その作用は諸刃の剣であり,BMSよりも遅発性ステント血栓症を引き起こす可能性が高いため期待されていたほど中長期予後を改善していないのではないかと結論付けている.

表1.jpg

【参考文献】
1) Sousa JE et al: Circulation. 2001;103:192-5
2) Morice MC et al: N Engl J Med. 2002 6;346:1773-80
3) Moses JW et al: N Engl J Med. 2003;349:1315-23
4) McFadden EP et al: Lancet. 2004;364:1519-21
5) Pfisterer M et al: J Am Coll Cardiol. 2006;48:2584-91
6) Daemen J et al: Lancet. 2007;369:667-78
7) Lagerqvist B et al: N Engl J Med. 2007;356:1009-19
8) Kastrati A et al: N Engl J Med. 2007;356:1030-9
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DES時代の心臓血管麻酔 その1 [Drug-Eluting Stent]

はじめに
 Andreas Gruentzigにより1977年に初めて施行された冠動脈インターベンション(Pericutaneous coronary intervention:PCI) は1980年代に大きく普及し,ステント治療は虚血性心疾患に対する中心的な役割を担っている.その一方でステント留置後のステント内狭窄は大きな問題の一つであり,治療を要するステント内狭窄だけでも20%以上の症例に認められてきた.ステント内狭窄に対しては多くのデバイスによって治療が試みられたが,有効性を示すことができたのは血管内放射線療法,薬剤溶出性ステント(Drug-eluting stent:DES)のみである.再狭窄予防の切り札と考えられていた放射線療法であるが,ステント内狭窄に対しては再狭窄率を減少させたものの新規の狭窄に対しては有効性を示すことができなかった.さらに手技が煩雑であるため冠動脈血管内治療の主流とはならず,再狭窄の制御はDESの登場まで待つこととなった.
 今回は,本邦では2004年に承認されその後急速に普及してきたDESの有効性と問題点,DES留置症例に対する周術期管理について最新の知見を述べる.

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