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周術期に発症するPAC・PVC その1 [PAC・PVC]

 PAC・PVCは心室細動や洞不全症候群などの重症な不整脈と異なり軽症の不整脈に分類され経過観察になることが多い.期外収縮は周術期に最も遭遇する不整脈であるが,周術期にはその一部が重症化する危険性がある.今回は周術期の期外収縮に焦点を絞り,その特徴と管理法について述べる.

1. PAC
 PACとは,心房およびそれに接合する肺静脈,上大静脈,下大静脈,冠状静脈洞を起源とする期外収縮である.原因としてはジギタリス中毒,強心薬投与,テオフィリン投与などが挙げられる.過度の交感神経亢進状態,心疾患等による心房負荷,肺疾患,甲状腺疾患などの基礎疾患も原因となるが,原因が明らかでない症例も多い.PACは治療の対象になることは少ないが,強い自覚症状を伴う症例,PACの多発により心機能が低下している症例,心房細動に移行する可能性がある症例で治療適応となる.特に周術期に発症したPACは心房細動,すなわち周術期心房細動に移行する可能性が高いとされる.一般的に心房細動を発症すると脳梗塞や心不全などの心血管系イベントは約2倍に増加することが知られていたが1),周術期心房細動は一般的な心房細動と異なり在院日数を多少延長させるものの生命予後に影響を与えることは少ないと考えられてきた.しかし,近年周術期心房細動の発症が一般的な心房細動と同様に心血管系イベントを含む多くの合併症に影響を与えている可能性が指摘され,周術期心房細動への関心が高まっている2).周術期心房細動には様々な因子が影響すると考えられ,有効性が認められた予防法,治療法も多岐にわたる. 以下,周術期心房細動について特徴,予防法,発症した際の治療法について述べる.

【参考文献】
1) Benjamin EJ et al.: Impact of atrial fibrillation on the risk of death: the Framingham Heart Study. Circulation 98 :946-52,1998
2) Villareal RP et al.:Postoperative atrial fibrillation and mortality after coronary artery bypass surgery. J Am Coll Cardiol. 43 :742-8,2004

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大動脈二尖弁が大血管に与える影響 [抄読会]

Incidence of aortic complications in patients with bicuspid aortic valves.

【背景】
 大動脈二尖弁(BAV)患者では,大動脈関連合併症の発生率が高いとされている.

【方法】
 ミネソタ州オルムステッド郡に居住しているBAV患者を対象に大動脈関連合併症の包括的評価を行った.1980 - 1999年の期間に心エコー検査でBAVと診断されたオルムステッド郡の全住民コホートの追跡結果を解析し,大動脈関連合併症について検討した.追跡は2008 - 2009年まで行われた.主要転帰評価項目は,胸部大動脈解離,上行大動脈瘤,大動脈手術とした.

【結果】
 心エコー検査でBAVと確定診断された連続症例416例を対象とした.平均追跡期間は16年であった.416例のうち2例に大動脈解離が発生し,発生率は患者10,000例当たり3.1例/年(95%CI:0.5-9.5),オルムステッド郡の一般集団と比較した年齢調整相対リスク(RR)は8.4(95%CI:2.1-33.5,p = 0.003)であった.ベースライン時に50歳以上だった患者および大動脈瘤がみられた患者の大動脈解離発生率は,患者10,000例当たりそれぞれ17.4例/年(95%CI:2.9-53.6),44.9例/年(95%CI:7.5-138.5)であった.さらに未診断の二尖弁患者における大動脈解離の包括的検討により二尖弁患者における大動脈解離の発生率を推定した(患者10,000例当たり0.4-3.8例/年).ベースライン時に大動脈瘤がなかった患者384例のうち49例で追跡時に大動脈瘤が発生し,発生率は患者10,000例当たり84.9例/年(95%CI:63.3-110.9),年齢調整RRは86.2(95%CI間:65.1-114, p<0.001 vs 一般集団)であった.大動脈手術の25年間の施行率は25%(95%CI:17.2-32.8)であった.

【結論】
 平均追跡期間16年のBAV患者集団における大動脈解離の発生率は一般集団と比較して有意に高かった.

【解説】
 大動脈二尖弁は大動脈弁尖への血流の摩擦による機械的刺激が三尖よりも大きいため反応性繊維性変化や石灰化を生じやすくなり大動脈弁狭窄や大動脈弁逆流を生じやすいといわれている.
本研究は,大動脈二尖弁患者では大動脈に関しても臨床転帰に影響を及ぼすような大動脈の病的障害が発生することを示唆している.一方,大動脈二尖弁患者における大動脈解離のリスクは一般の約8倍高いにもかかわらず,大動脈解離の絶対発生率は低い.大動脈解離の発生率は,50歳を超える患者およびベースライン時に大動脈瘤がみられた患者で高い.今後は,50歳以上または大動脈瘤を合併している大動脈二尖弁患者は定期的なフォローが必要であろう.


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OPCAB vs CCAB - メタアナリシスによる検討 [抄読会]

Off-pump vs. on-pump coronary artery bypass surgery: an updated meta-analysis and meta-regression of randomized trials.


【目的】
 オフポンプ冠動脈バイパス術(OPCAB)と従来からの人工心肺を使用した冠動脈バイパス術(CCAB)を比較し,その利点について再評価を行う.

【方法】
 OPCABとCCABの30日後の臨床転帰または院内臨床転帰を報告した発表されている,または未発表の無作為化試験について,MEDLINE,EMBASE,Cochrane databaseから抽出した.転帰は,全死亡率,脳卒中,心筋梗塞とした.変量効果メタアナリシス・モデルを用いた総合治療効果の測定とメタ回帰分析を行い,試験とそれぞれの因子が,効果に与える影響についても検討を行った.

【結果】
 59件の試験,計8,961例の患者(平均年齢63.4歳,16% が女性)を対象とした.OPCABでは,術後脳卒中の発生率がCCABと比較して有意に少なかった[RR:0.70,95%CI:0.49 - 0.99].一方,死亡率(RR:0.90,95%CI:0.63 - 1.30)および心筋梗塞(RR:0.89,95%CI:0.69 - 1.13)に有意差を認めなかった.メタ回帰分析では,平均年齢,性差,グラフト本数かかわらず,OPCABの効果は同じであった.

【結論】
 OPCAB は脳卒中を有意に減らす可能性があるが,死亡率・周術期心筋梗塞の発症率には影響を与えない.

【解説】
 今回の検討からOPCAB は脳合併症のリスクが高い患者において有用性が高い一方,周術期死亡率は術式によらないという結果が得られた.今後,特に脳合併症の高リスク症例ではOPCABが選択されるものと思われる.一方,OPCABには特殊な技術が求められるため,高リスク症例のみ(年に数例)の執刀では技術維持が難しい.今後もOPCAB・CCABの術式の適応や,どちらが適切かを決めるのは困難であると思われる.

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心臓手術における輸血開始のタイミング [抄読会]

Transfusion requirements after cardiac surgery: the TRACS randomized controlled trial.

【背景】
 心臓外科手術では同種血輸血が行われる割合が高く,その割合は40%から90%とされる.重症の貧血は心臓外科手術後の罹病率と死亡率の独立した危険因子であるが,一方で輸血はコストが著しく高く,また感染症,神経系の合併症,腎不全といった有害事象の発生や,術後の入院中および長期での生存率低下との関連が指摘されている.輸血の判断は,ヘモグロビンやヘマトクリット値に基づいて行われることが多いが,心臓手術後の輸血を開始する基準に関して,エビデンスに基づくガイドラインはない.

【方法】
 本試験は前向き無作為化非劣性対照試験である.人工心肺を用いて行われた待機的手術患者502例(除外症例は18歳未満,緊急手術,大動脈手術,慢性貧血,凝固障害,肝機能障害,末期腎臓疾患,同意拒否の患者)を対象とし,十分量の輸血を行う群と制限的な輸血を行う群に割り付けた.
 十分量の輸血を行う群に割り付けられた患者には,手術開始から集中治療室を出るまでの間,ヘマトクリット値が30%未満になった時点で赤血球輸血を行い,制限的な輸血を行う群に割り付けられた患者には,ヘマトクリット値が24%未満になった時点で赤血球輸血を行った.一次エンドポイントは術後30日間の全死因死亡率および入院中の重度合併症発生率(心原性ショック, ARDS,ARFの発症)を含む複合エンドポイントとした.ベースラインでの両群の特性および手術中における術式に関連した変数は,両群間で同等であった.

【結果】
 ヘモグロビン値は,十分量の輸血群で10.5g/dL(95%CI:10.4~10.6),制限的な輸血群で9.1g/dL(95%CI:9.0~9.2)であった(p<0.001).輸血を受けた患者は制限的な輸血群と比較し,十分量の輸血群に多くみられた(78%vs47%,p<0.001).輸血された赤血球総単位数は,十分量の輸血群で613,制限的な輸血群で258であった(p<0.001).新鮮凍結血漿,血小板または寒冷沈降物の使用に関して群間差はみられなかった.
 一次複合エンドポイントは,十分量の輸血群の10%(95%CI:6%~13%),制限的な輸血群の11%(95%CI:7%~15%)にみられた(群間差1%[95%CI:−6%~4%,p=0.85]).
 多変量Cox解析において,輸血されたRBSの単位数と術後30日間の死亡リスク上昇に関連がみられ,そのHRは1.2であった(95%CI:1.1~1.4,p=0.002).

【結論】
 輸血制限の有無は周術期予後に影響を与えなかった.

【解説】
 本試験はヘモグロビン値の輸血の閾値を8g/dL未満に設定した場合でも患者アウトカムに悪影響がないことを示したBraceyらの試験結果を追認している.この理由として赤血球輸血に副作用があること,そして赤血球製剤は酸素運搬能力が十分でないことが挙げられる.まず,輸血によって免疫修飾現象transfusion-related immnomodulationともよばれる免疫抑制が起こる.これは混入した白血球が原因であるとされる.さらに混入した白血球は非溶血性発熱反応,サイトメガロウイルス感染症,抗HLA抗体産生に伴う血小板不応症とも関連する.これらに対しては現在本邦で使用されている白血球除去血液製剤が有効であろう.一方,赤血球製剤中の 2,3 diphosphoglycerateは直線的に減少し2週間で枯渇し,その回復には輸血後24時間以上必要である.このため,酸素かい離曲線は左方移動しており組織での酸素のリリースは悪化している.さらに赤血球の形状変化能が低下しているため微小循環における酸素運搬能が低下している.よって赤血球製剤は期待されるよりも酸素運搬能が発揮できていない.一方,これらの現象は採血からの時間に依存するとされるため,新鮮な赤血球製剤を用いることによって解決できる可能性がある.

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CABGにおけるグラフトの選択 [抄読会]

Second internal thoracic artery versus radial artery in coronary artery bypass grafting: a long-term, propensity score-matched follow-up study.

【背景】
 多枝血行再建術においては,内胸動脈・橈骨動脈・右胃大網動脈など様々な動脈が使用される.しかし,左内胸動脈に次ぐグラフトの選択に関しては議論が続いており,橈骨動脈・右内胸動脈のどちらが生命予後改善を得られるのか明らかになっていない.

【方法】
 多枝冠動脈疾患に対して行われた初回待機冠動脈バイパス術(CABG)1,001例の連続患者を対象とし,後ろ向きに解析を行った. 277例が両側内胸動脈を使用したバイパス術,724例が左内胸動脈と橈骨動脈を使用したバイパス術を受けていた.また, 2006年より内胸動脈のskeletonizationが開始された.一次エンドポイントは,長期の生存率・MACCE (心筋梗塞,脳卒中,心臓関連死,PCIまたはCABGの施行)生存率とした.さらにpropensity scoreによるマッチングも行った。

【結果】
 バイパス術の平均件数は両群に有意差を認めなかった.人工心肺時間,遮断時間は,両側内胸動脈群で有意に長かった. MACCE発生率は,両側内胸動脈群で1.4%,橈骨動脈群で5.7%であった(p=0.004). 5年生存率は,両側内胸動脈群で98.9%,橈骨動脈群で93% であった(p =0.054).しかし,3年後のMACCEフリー生存率は,両側内胸動脈群で95.9%,橈骨動脈群で86.4%であった(p<0.01).propensity scoreを用いると,PMI 発生率,MACCE発生率は両側内胸動脈群で有意に低かった.周術期死亡率は両群に差を認めなかった(p=0.45).術後5年生存率は,propensity scoreを用いると,両側内胸動脈群で98.9%,橈骨動脈群で93% であった(p =0.02). MACCEフリー生存率は,両側内胸動脈群では95.9%,橈骨動脈群で82.2%であった(p<0.01).

【結論】
 多枝血行再建術施行の際,左内胸動脈に次ぐグラフトは右内胸動脈である.

【解説】
 CABGに用いるグラフトの第一選択は左内胸動脈である.しかし,多枝血行再建時,その次に使用するグラフトの選択に関しては現在も議論が続いている.今回の検討では右内胸動脈を使用することによって,より高い生命予後改善効果を得ることができた.一方,両側内胸動脈使用によって,最も懸念されるのは胸骨・縦隔部の感染であるが,今回の検討における胸骨離開の発生率は両群で同等であった.よって内胸動脈採取の際pedicle harvestingでなくskeletonizationを行うことによって胸骨感染リスクが軽減される可能性がある.


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急性心不全におけるフロセミドの投与 - DOSE trial [抄読会]

Diuretic strategies in patients with acute decompensated heart failure.

【背景】
 ループ利尿薬は,急性心不全患者の治療に頻用される薬剤であるが,使用の際のプロトコールは確立されていない.

【方法】
 本研究は前向き二重盲検無作為化試験において,急性心不全患者 308 例に対し,フロセミドの静脈内投与を,12 時間ごとのボーラス投与または持続注入,および低用量(患者のそれまでの経口投与量と同等)または高用量(それまでの経口投与量の 2.5 倍)の4 群に割り付けた.複合主要エンドポイントは,ビジュアルアナログスケールスコアの 72 時間の曲線下面積(AUC)を用いて定量化した患者による症状の評価と, 72 時間までの血清クレアチニン値の変化とした.

【結果】
 ボーラス投与と持続注入との比較では,患者による症状の全般的評価(平均 AUC それぞれ 4,236±1,440,4,373±1,404,p=0.47),クレアチニン値の平均変化(それぞれ 0.05±0.3 mg/dL [4.4±26.5 μmol/L],0.07±0.3 mg/dL [6.2±26.5 μmol/L],p=0.45)ともに有意差を認めなかった.高用量と低用量との比較では,高用量群のほうが患者による症状の全般的評価の改善が大きくなる傾向あったが,有意ではなかった(平均 AUC 4,430±1,401 対 4,171±1,436,p=0.06).また,クレアチニン値の平均変化には群間に有意差を認めなかった(高用量群 0.08±0.3 mg/dL [7.1±26.5 μmol/L],低用量群 0.04±0.3 mg/dL [3.5±26.5 μmol/L],p=0.21).高用量法は,より強い利尿作用と,いくつかの転帰の改善に関連していたが,腎機能の一時的な低下にも関連した.

【結論】
 急性心不全患者において,利尿薬のボーラス投与と持続注入,高用量と低用量とで,患者による症状の全般的評価や腎機能の変化に有意差を認めなかった.

【解説】
 急性心不全時に使用する注射薬剤で腎保護効果が認められている薬剤はない.フロセミドも例外ではなく,腎前性腎不全を助長し予後を悪化させることが懸念されていた.本研究からフロセミド,特に高用量使用による腎機能悪化は一過性のものであり,長期予後への影響はないことが明らかになった.症状の改善も期待できるため,急性心不全におけるフロセミドは早期に必要量を投与するのが望ましいと思われる.

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急性心不全に対するネシリチド(BNP)の効果 [抄読会]

Effect of nesiritide in patients with acute decompensated heart failure.

【背景】 
 ネシリチド(BNP)は,急性心不全患者に伴う呼吸困難の治療薬として承認されている.しかし,これまでに行われた研究からネシリチドに合併症増加・死亡率悪化の可能性があることが示唆されている.

【方法】
 急性心不全により入院した患者 7,141 例を,標準治療に加えてネシリチドを投与する群とプラセボを投与する群に無作為に割り付けた.投与は 24 - 168 時間行った.主要エンドポイントは,呼吸困難発症 6 時間後,24 時間後の変化と30 日以内の心不全による再入院または死亡の複合割合とした.

【結果】
 ネシリチド群ではプラセボ群と比較して,呼吸困難の著明な改善または中程度に改善される割合が,6 時間後(44.5% vs 42.1%,p=0.03),24 時間後(68.2% vs 66.1%,p=0.007)と有意に高かったが,事前に規定した有意水準には達しなかった(両時点の評価について p<0.005 またはいずれかの時点で p<0.0025).30 日以内の心不全による再入院または全死因死亡の発生率は,ネシリチド群 は9.4%であったのに対し,プラセボ群 10.1%であった(絶対差 -0.7 パーセントポイント,95% CI -2.1 - 0.7,p=0.31).30 日の全死因死亡率(ネシリチド群 3.6% vs プラセボ群 4.0%,絶対差 -0.4 パーセントポイント,95% CI -1.3 - 0.5),推定糸球体濾過量の低下が 25%を超えることと定義した腎機能悪化の発生率(31.4% vs 29.5%,OR 1.09,95% CI 0.98 - 1.21,p=0.11)に,有意差を認めなかった.

【結論】
 ネシリチドは,死亡と再入院の発生率の上昇にも低下にも関連しておらず,呼吸困難に対する効果は小さかった.腎機能の悪化との関連は認められなかったが,低血圧の発生率上昇との関連が認められた.よって急性心不全症例に対するネシリチドのルーチン使用は推奨されない.

【解説】
 本研究では当初懸念されていたネチシリドによる(特に低血圧に起因すると思われる)腎機能の悪化,死亡率の上昇は認められなかった.その一方で,ネチシリドは従来の硝酸薬を使用した治療法との間に有意差を認めることができなかった.日本ではネチシリドは発売されていないが,カリペプチド(ANP)が同様の目的で使用されている.カリペプチドは作用時間がネチシリドより短く低血圧も起こしにくいとされている.しかし急性心不全を対象とした研究は行われていないため,今後RCTによる検討が必要であろう.

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非心臓手術において術前貧血が周術期予後に与える影響 [抄読会]

Preoperative anaemia and postoperative outcomes in non-cardiac surgery: a retrospective cohort study.

【背景】
 心臓手術では、術前の貧血は予後を悪化させることが知られているが,非心臓手術において術前貧血が予後に与える影響については明らかになっていない.本研究では非心臓手術において術前貧血が周術期の死亡率・合併症発症率に与える影響について検討した.

【方法】
 米国外科学会の手術の質改善プログラム(ACS NSQIP)データベースに08年に登録された非心臓手術受けた患者22万7425人(平均年齢56.4歳、57.6%が女性)を対象とした.30日死亡率と合併症罹患率,術前と周術期の危険因子を抽出した.合併症罹患については,心臓(急性心筋梗塞,心停止),呼吸器(肺炎,48時間を超える人工呼吸,予定外の挿管),中枢神経系(脳血管障害,24時間を超える昏睡),腎臓(進行性腎不全,急性腎不全),創傷(切開部深層感染,手術対象臓器の感染,創傷離開)に発生するものと、敗血症,静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症または肺塞栓症)について検討した.

【結果】
 主要エンドポイントは30日死亡,2次エンドポイントは術後30日間の合併症発症とした. 22万7425人中6万9229人(30.44%)が術前貧血とされた.軽症貧血(男性:29% < Ht <39%, 女性: 29% < Ht <36%) が5万7870人.中等症~重症貧血(Ht <29%)は1万1359人だった.術前貧血群の周術期死亡のリスクは貧血がなかった患者に比べ有意に高かった.30日死亡率は貧血なし患者が0.78%,貧血があった患者では4.61%であった(OR 1.42, 95%CI 1.31-1.54).軽症貧血患者に限定しても差は有意(OR 1.41, 95%CI 1.30-1.53),中等症~重症貧血群ではさらに顕著になった (OR 1.44, 95%CI 1.29-1.60) .周術期合併症罹患率も術前貧血群で有意に高かった(5.33% vs 15.67%; (OR 1.35, 95%CI 1.30-1.40).軽症貧血群では(OR 1.31, 95%CI 1.26-1.36),中等症~重症貧血群では(OR 1.56, 95%CI 1.47-1.66)であった.合併症に関しては中枢神経系の合併症以外貧血がすべての危険因子となった.

【結論】
 非心臓手術を受ける患者では軽症でも術前貧血が周術期死亡と周術期合併症の独立した危険因子であった.

【解説】
 以前より心臓手術では術前の貧血が予後に影響を与えることが報告されていた.今回,非心臓手術においても同様の結果が得られた.術前から貧血が認められた場合,鉄剤・エリスロポエチンなど輸血以外の方法で貧血を補正することにより予後の改善が得られる可能性がある.

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左心不全患者に対する冠動脈バイパス術 [抄読会]

Coronary-Artery Bypass Surgery in Patients with Left Ventricular Dysfunction

【背景】
 冠動脈疾患に加えて心不全を合併する症例に対する冠動脈バイパス術(CABG)の有効性は現在のところ確立されていない.

【方法】
 2002 年 7 月~2007 年 5 月に,EF<35%で CABG が適応となる冠動脈疾患症例1212 例を,薬物療法単独(602 例)または薬物療法+CABG(610 例)に無作為に割り付けた.主要転帰は全死因死亡率とした.主要副次的転帰は,心血管系の原因による死亡率,全死因死亡または心血管系イベントに伴う入院の複合割合とした.

【結果】
 主要転帰は,薬物療法群 244 例(41%),CABG 群 218 例(36%)で発生した(CABG のHR 0.86,95% CI 0.72 - 1.04,p=0.12).心血管系イベントに伴う死亡は,薬物療法群 201 例(33%),CABG 群 168 例(28%)であった(CABG のHR 0.81,95% CI 0.66 - 1.00,p=0.05).全死因死亡または心血管系イベントに伴う入院は,薬物療法群 411 例(68%),CABG 群 351 例(58%)であった(CABG のHR 0.74,95% CI 0.64 - 0.85,p<0.001).追跡期間中 (中央値 56ヵ月) にCABG を施行されたのは,薬物療法群 100 例(17%),CABG 群 555 例(91%)であった.

【結論】
 本試験では薬物療法単独と薬物療法+CABG との間に主要エンドポイントとした全死因死亡率に有意差を認めなかった.CABG 群では薬物療法単独群と比較して,心血管系の原因による死亡率と全死因死亡または心血管系の原因による入院の発生率が低かった.

【解説】
 本試験ではガイドライン推奨の基礎投薬を充分に行ったうえで薬物療法単独とCABG併用の2群で検討を行っている.その結果,有意ではなかったが,薬物療法単独と比較しバイパス術により総死亡率が14%低下し,さらにバイパス術の併用によって心血管疾患死(19%),およびが死亡と全ての入院(26%)は有意に低下した. CABGの有用性が示されたことによって,今後狭心症合併心不全においても積極的血行再建が推奨されるであろう.


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高リスク症例における麻酔深度モニターの精度 [抄読会]

Prevention of Intraoperative Awareness in a High-Risk Surgical Population

【背景】
 術中覚醒は,周術期合併症のリスクが高い患者の 1%近くに発生する.覚醒の予防には,標準的な呼気終末麻酔薬濃度(MAC)モニタリングを行うプロトコールよりも,脳波から求めるバイスペクトラルインデックス(BIS)を用いるプロトコールのほうが優れているという仮説を検証した.

【方法】
 前向き無作為化単盲検試験として覚醒のリスクが高い症例(図1) 3施設6,041 例を,BIS を指標とした麻酔を行う群(40 < BIS < 60)または,MAC を指標とした麻酔を行う群(0.7 < age-adjusted MAC < 1.3)に無作為に割り付けた.プロトコールには,警報に加えて,計画的教育とチェックリストが含まれた.Fisher の正確確率検定の片側検定を用いて,BIS プロトコールの優越性を検討した.

【結果】
 術後に面接を行った患者で明確な術中覚醒が生じたのは,BIS 群では 2,861 例中 7 例(0.24%)に対し,MAC 群では 2,852 例中 2 例(0.07%)であり(差 0.17 パーセントポイント,95% CI -0.03 - 0.38,p=0.98) ,BIS プロトコールの優越性は示されなかった.明確な術中覚醒が生じたかまたはその疑いがあったのは,BIS 群 19 例(0.66%)に対し MAC 群 8 例(0.28%)であり(差 0.38 パーセントポイント,95% CI 0.03 - 0.74,p=0.99),この場合も BIS を用いたプロトコールの優越性は示されなかった.麻酔薬の投与量と術後主要有害イベントの発生率に差を認めなかった.

【結論】
 BIS プロトコールの優越性は確立されなかった.覚醒をきたした患者は MAC 群のほうが BIS 群より少なかった.

【解説】
 心臓血管手術症例を始めとする術中覚醒のハイリスク症例では麻酔深度モニターとしてBISの精度はMACと同程度の精度であった.現在,心臓血管手術においては近赤外線モニターが優先され,麻酔深度モニターが行われない(行いにくい)症例も多い.しかし心臓血管麻酔が術中覚醒のリスクを高めること,静脈麻酔を中心とした麻酔法が選択されやすいことから今後心臓血管麻酔時のBISの重要性は高まるものと思われる.

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